ATCは、IFRで飛行している航空機に対して、
“N216BD, Cruise 8,000.”
のようなクリアランスを出すことがあります。
日本語の意味としては、
「N216BD、クルーズ8,000フィート」
です。
普通の
“Maintain 8,000”
とは意味がかなり違います。
「Maintain 8,000」なら、原則として8,000 ftを維持します。
一方、
“Cruise 8,000”
の場合は、その地域で適用される最低IFR高度から8,000 ftまでの高度帯全体が、パイロットに与えられるという意味になります。
つまり例えば、
- 8,000 ft
- 7,000 ft
- 6,000 ft
- 5,000 ft
など、最低IFR高度以上であれば、必要に応じて上昇・降下・水平飛行をパイロットの判断で行うことができます。
ただし、最低IFR高度がいくらなのかを判断する責任はパイロット側にあります。
ATCによる他機とのセパレーションは引き続き提供されます。

非常に重要な制限
ここは試験でも実運航でも大事です。
例えば8,000 ftから7,000 ftへ降下するとき、
“Leaving eight thousand.”
などとATCに報告した場合、8,000 ftは放棄した高度とみなされます。
その後、
「やっぱり8,000 ftに戻ろう」
ということは自由にはできません。
再び8,000 ftへ戻るには、ATCから新たなクリアランスをもらう必要があります。
FAA AIMでも同じ考え方が明記されています。 連邦航空局
ここがCruise Clearanceの最大の注意点の一つです。
Cruise Clearanceを受けると、アプローチも許可される
もう一つ非常に重要なポイントがあります。
目的地までの
Cruise Clearance
を受けると、基本的には目的地で計器進入を実施する権限も含まれます。
つまりATCから改めて、
“Cleared for the approach.”
と言われるのを待つ必要はありません。
これは通常のIFR運航とはかなり感覚が違います。
通常なら、
「Expect ILS Runway 27」
などの情報を受け、
最終的に
「Cleared ILS Runway 27 approach」
というアプローチ・クリアランスを受けます。
Cruise Clearanceでは、そのアプローチ実施の権限も含まれているということです。

ただし、降下計画はすべてパイロットの責任
ここが一番重要です。
Cruise Clearanceをもらったからといって、
「8,000 ftから好きなだけ降りていい」
という意味ではありません。
パイロット自身が、
- MEA
- MOCA
- MSA
- Minimum IFR Altitude
- Approach segment altitude
- FAF高度
- MDA / DA
などを確認して、安全な最低高度を判断しなければなりません。
記事では、
巡航高度からアプローチまでの降下計画は、基本的にパイロット自身が行う
という点を強調しています。
使用するアプローチによっては、Final Approach Courseに適切に乗るために、
Procedure Turn
が必要になる場合もあります。
なぜATCはCruise Clearanceを出すのか
Cruise Clearanceは、交通量の多い大都市のターミナルエリアよりも、
航空交通量の少ない地域
で使われることがあります。
またATCから与えられるだけでなく、パイロット側から要求することも可能です。
記事では具体例として、
米国中西部を夜間に飛ぶ地域貨物便
を挙げています。
例えば、
- UPSやFedExなどの貨物を運ぶ
- Metroliner
- Cessna Caravan
のような航空機で、
大手航空会社が就航していない小都市間を低高度で飛ぶケースです。
こうした場所では交通量が少ないため、Cruise Clearanceによって操縦士に高度選択の自由を与えやすくなります。

雲・着氷回避にも便利
これはかなり実用的な使い方です。
例えば、
8,000 ftから4,000 ftの間に複数の雲層があり、一部に着氷の可能性があるとします。
通常の
Maintain 8,000
では、ATCの許可なしに高度を変更できません。
しかし、
Cruise 8,000
なら最低IFR高度以上の範囲で、
雲を避けるために
7,000 → 6,000 → 7,500 ft
などと高度を調整できます。
もちろん前述の通り、一度ATCに「その高度を離れた」と報告した高度には勝手に戻れません。
記事では、着氷条件を避けるためにこの自由度が役立つケースを紹介しています。
一言で覚えるなら
Cruise 8,000 = 8,000 ftを維持せよ、ではありません。
正確には、
「最低IFR高度から8,000 ftまでの高度帯を使用してよい。高度変更はパイロット判断。目的地へのアプローチも許可されている。」
という意味です。
ただし、
一度降下を開始して、その高度を離れたことをATCに報告すると、その高度は再使用できない
という制限があります。FAA AIMにもこのルールが明記されています。 連邦航空局
普通の高度指示との違い
| ATC指示 | 意味 |
|---|---|
| Maintain 8,000 | 8,000 ftを維持 |
| Cruise 8,000 | 最低IFR高度〜8,000 ftの範囲を使用可能 |
| Cruise中の上昇・降下 | 原則パイロット判断 |
| 最低IFR高度の判断 | パイロットの責任 |
| 他機とのセパレーション | ATCが提供 |
| 目的地での計器進入 | Cruise Clearanceに含まれる |
| 離れたと報告した高度へ戻る |


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