ILS進入中にローカライザーやグライドスロープが不安定に飛び跳ねたことはありますか?
ここでは、その原因と対処法について解説します。
航空会社クルーの報告:ニューアークでのゴーアラウンド
以下は、**NASAのASRS(航空安全報告システム)に寄せられた、ある航空会社のクルーによる報告です。彼らはニューアーク国際空港(KEWR)**への最終進入中に問題を経験しました。
あなたなら、以下の状況でどの時点でゴーアラウンドを決断したでしょうか?
EWR空港の滑走路22L進入のためベクター(誘導)を受けていた際、アプローチクリアランスを得ました。
最初はILS信号を正常に受信していましたが、途中から信号が不安定になり、読み取れなくなりました。
ニューヨークアプローチ(進入管制)からニューアークタワーへコンタクトするよう指示され、タワーに連絡したところ、「進入コースより右に外れている」と伝えられました。
さらに数分後、タワー側で「低高度警報」を受信したとして、ゴーアラウンドの指示を受けました。
我々はゴーアラウンドを実施し、ニューヨークディパーチャー(出発管制)へ連絡、再度進入のためのベクターを受けました。
このようなケースは、ILS信号の妨害や反射、整備不良、地形の影響などによって発生することがあります。パイロットとしては、計器の挙動が不自然になった時点で即座に異常を認識し、必要なら早めにゴーアラウンドを判断することが重要です。
信号の信頼性低下:航空機・車両・地形・アンテナの影響
ILSアンテナ付近で航空機や車両が作業・移動していると、ILS信号の整合性が乱れ、進入誘導の信頼性が低下することがあります。
この問題を防ぐため、一部の空港では**「ILSクリティカルエリア(重要区域)」**が設定されています。
天井(雲の高さ)が800フィート以下、視程が2マイル未満の場合、タワー管制のある空港では、この区域内に進入しないよう停止線で待機するよう指示されることがあります。
しかし注意が必要なのは、すべての空港にこの「ILSクリティカルエリア」があるわけではないという点です。
ILSクリティカルエリアが設定されていない空港では、進入機がいるにもかかわらず、別の航空機が停止線までタキシー(地上走行)してくることがあります。
これは滅多に問題になることはありませんが、ローカライザーやグライドスロープ、あるいはその両方の信号が遮断・乱れる可能性があるため、パイロットはいつでもそうした信号異常に備えておく必要があります。
信号の信頼性低下:航空機側の受信機が原因の場合
ILS信号が不安定になる原因は、あなたの航空機そのものにある可能性もあります。
もし進入中に問題が発生し、他の航空機では同じ問題が起きていない場合は、ローカライザー(LOC)やグライドスロープ(GS)の受信機を整備記録に書き上げ(整備依頼)する必要があるかもしれません。
ローカライザーのサービス範囲(Service Volume)
ローカライザーの信号は、サービス範囲外でも受信できることがありますが、信号の精度が保証されているのは、以下の範囲のみです:
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滑走路中心線から左右10度以内で、最大18NM(約33km)まで
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左右35度まで広げた場合、有効範囲は最大10NM(約18.5km)
ただし注意すべきなのは、この「サービスボリューム内」に入っていても、必ずしも安定した信号が受信できるとは限らないという点です。
したがって、信号の品質は地形や他の要因にも大きく左右されるため、サービスボリュームだけに頼るのではなく、実際の挙動をしっかり確認することが重要です。
グライドスロープは通常、最大10NM(約18.5km)まで使用可能とされています。
しかし、場所によっては10NMを超える範囲でも使用可能なように認証されたグライドスロープも存在します。
グライドスロープの動作はローカライザーと同じですが、単に「横向きにしたようなもの」と考えると分かりやすいです。
この装置も、ローカライザーと同様に90Hzと150Hzの電波ローブ(波)を送信し、ILS受信機がそれを解析して位置を判断します。
グライドスロープの電波ビームは厚さ1.4度で、その中心から上下それぞれ0.7度ずつの範囲にグライドパス(降下経路)が設定されます。
通常のグライドスロープは、航空機を滑走路へ向かって約3度の降下角で導くように設計されています。
※この「3度の降下角」は、ILS進入において最も一般的な設定です。これにより、安全かつ効率的に着陸体制へ入ることができます。
これらのサービスボリューム(有効範囲)を外れた場合は、進入経路を正確にたどれているかどうかをナビゲーション計器で慎重に確認する必要があります。
これは特に、全米で最も混雑する空港に25マイル以上のロング・ファイナル(長い最終進入)で進入するような場合には、非常に現実的で重要な課題となります。
コースガイダンスの信号劣化に対する対処法は?
では、ILS信号の挙動がおかしいとき、どうすればよいのでしょうか?
もしIMC(計器気象条件)下にいる場合は、ゴーアラウンド(着陸復行)して、アプローチをやり直すのが賢明な判断です。
多くの場合、ILS信号は地上の車両や航空機によって妨害されることがあります。
アプローチを再設定して再度進入する頃には、妨害していた車両などがいなくなっている可能性が高いです。
もし2回目のアプローチでも問題が解消されない場合は、別のアプローチ方式を試みることをおすすめします。
特に、地上設備に依存しないGPSアプローチであれば、同様の妨害を受けにくく、より安定した進入が期待できます。
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