拒否された離陸(中断離陸)時に安全に停止する方法
離陸を中止すべき理由は数多くありますが、重要なのは離陸時に常に明確な計画を持っておくことです。
ここでは、拒否された離陸(Rejected Takeoff)に備える方法と、実際に実行する方法について説明します。
なぜ離陸を拒否するのか?— 緊急事態と異常事態
セスナ・スカイホーク(Cessna Skyhawk)であれ、エアバスA320であれ、離陸滑走中にはさまざまな緊急・異常事態が発生する可能性があり、中断離陸が必要になる場合があります。
以下は、最も一般的なケースです:
- エンジン出力の喪失
- ドアが開いてしまう
- 滑走路への他の航空機・車両の進入(滑走路侵入)
- 加圧システムの故障
- 低油圧 / 高油温
- 失速防止システム / 迎角計(AOA)の故障
- 加速不足
- エンジンの異常振動
- ウィンドシア(風の急激な変化)
- 火災の発生(どの種類であれ)
- 方向制御の喪失
- 管制官(ATC)による離陸中止の指示
どんな異常でも違和感を感じた場合は、できるだけ早い段階で低速のうちに離陸を拒否することが重要です。
離陸計画を事前にブリーフィングする
一人で飛行する場合でも、同乗者がいる場合でも、クルーと一緒に飛ぶ場合でも、拒否する基準を事前に確認することが大切です。
これはすべての航空会社がパイロットに義務付けていることであり、一般航空(GA)のパイロットにも大いに役立ちます。
どのタイミングで機体を離陸させるのか、どの条件で離陸を拒否して滑走路上にとどまるのかを口頭で確認しておくことが重要です。
すべてのシナリオを想定することはできませんが、事前に基準を明確にしておくことで、離陸時の「行くべきか、やめるべきか」の判断を迅速に下すことが可能になります。
ピストン機(小型機)とジェット機の違い
ピストンエンジン機(小型飛行機)の場合、ジェット機のような高速での離陸拒否に関する問題は少ないです。
基本的に、ピストン機では離陸前に異常が発生したら、滑走路上にとどまるのが最善の選択肢です。
ただし、以下のような場合には離陸を継続せざるを得ないこともあります。
- 滑走路が残っていない場合(すでに高速で滑走している)
- 軽微な問題であり、飛行中に対処できると判断できる場合
結論:
✅ 離陸の前に「拒否する基準」を明確にする
✅ 異常を感じたら、できるだけ低速のうちに離陸を拒否する
✅ ピストン機では、問題が発生した場合は基本的に滑走路上にとどまるのがベスト
✅ 飛行中に対処できる問題かどうかを判断し、無理な離陸は避ける
このような事前の計画と心構えが、安全な離陸と飛行を実現する鍵となります。
滑走路の長さが気になる? FAAの推奨事項はこちら
FAA(米国連邦航空局)は『Airplane Flying Handbook』の第5章で次のように述べています。
「離陸前に、パイロットは飛行機が離陸しているべき地点を滑走路上に設定すべきである。その地点に達しても飛行機がまだ浮いていない場合、直ちに離陸を中止する措置を取らなければならない。適切に計画し実行すれば、過度なブレーキングを伴うような特別な対策を取らなくても、残りの滑走路内で安全に停止できる。過度なブレーキングは方向制御の喪失、機体の損傷、または人身事故を引き起こす可能性があるため注意が必要である。」
拒否された離陸(中断離陸)の実行方法
拒否された離陸の基本手順はシンプルです:
- 出力をアイドル(最小)にする
- 方向制御を維持する
- 必要な範囲で最大限のブレーキングを行う
ただし、機体メーカーが推奨する手順に従うことが最優先です。
また、エンジン火災が原因で離陸を中止する場合は、燃料供給を遮断するためにミクスチャーコントロールをアイドルカットオフにする必要があるかもしれません。その後、機体が完全に停止したら、地上でのエンジン火災に対する手順を実行してください。
「最大限必要なブレーキング」を行う際に考慮すべきポイント
離陸中止時に「最大限必要なブレーキング」を行う際には、いくつか注意すべき点があります。
もし数千フィートの滑走路が残っている場合、無理に強くブレーキをかける必要はないかもしれません。
**エアロダイナミック・ブレーキング(空力ブレーキ)**を活用すれば、ブレーキをほとんど使わずに減速できる場合もあります。
重要なのは、滑走路の端までに安全に停止できるだけのブレーキ操作を行うことです。
なぜ急ブレーキを避けるべきなのか?
離陸滑走時、機体が回転速度(Vr)に近づくと、翼が揚力を発生するためタイヤへの荷重が減少します。
この状態で強くブレーキを踏むと、方向制御を失いやすくなるため注意が必要です。
さらに、高速域でブレーキをロックさせると、タイヤがバースト(破裂)したり、ブレーキシステムが故障する可能性もあります。
そのため、FAAが推奨する「最大限必要なブレーキング」とは、滑走路の残り距離に応じて必要な範囲内でブレーキをかけることを意味します。
意図を管制官や周囲の航空機に伝える
無事に減速し、緊急事態が収束したら、ATC(航空管制官)またはCTA(共通交通周波数)を使用する他の航空機へ、自分の状況を伝えましょう。
以下のポイントを明確に伝えます。
- 離陸を拒否したこと
- どこで滑走路を退出する予定か
- 追加のサポートが必要かどうか
離陸中止直後は焦らず、深呼吸して冷静に対応することが重要です。
十分に速度を落とし、機体を確実にコントロールできる状態になってから、安全に滑走路を退出しましょう。
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