GPSとDMEは異なるシステムであり、それぞれ異なる種類の距離を測定します。
GPSは「地表上の距離(グラウンドディスタンス)」を計算し、DMEは「斜めの距離(スラントレンジ)」を計算します。
GPS(地表)距離
GPSのディスプレイには、2点間の緯度・経度をもとに測定された地表距離が表示されます。ほとんどの場合、これはIFR(計器飛行)にも使用可能です。
ただし、IFR飛行でGPSを使用するには、以下のいずれかに準拠したGPS機器が必要です:
TSO-C129、TSO-C196、TSO-C145、またはTSO-C146(参考:AC 20-138)。
FAAはこれらを「適合するRNAVシステム(suitable RNAV systems)」と呼んでいます。
準拠したGPSを使用していれば、ナビゲーションエイド(NAVAID)や空港へのナビゲーションなど、飛行のあらゆるフェーズでGPSを使うことができます(詳細は後述)。
スラントレンジ(DME)
DME(Distance Measuring Equipment:距離測定装置)はアナログ方式の航法システムで、UHFおよびVHFの無線周波数を使って、空間上の一点までの距離を測定します。では、DMEが測定している距離とは何でしょうか?
それはスラントレンジ(斜め距離)です。スラントレンジとは、航空機とDME局との間に仮想的に引いた斜めの直線の長さのことです。多くの場合、DMEのスラント距離は地表距離よりわずかに長くなります。
例えば、あなたが高度6,000フィート(MSL)でDME局の真上を飛行したとします。この場合、DME機器は「1マイル」と表示されますが、GPS距離は「0マイル」と表示されます。
GPS距離をDMEの代わりとして使用することについて
DMEとGPSの距離にはわずかな違いがある場合がありますが、FAA(連邦航空局)はAIM(Aeronautical Information Manual/航空情報マニュアル)の第1-2-3項において、以下のように述べています:
「運用要件を満たすことを条件に、操縦者は適合するRNAVシステムを以下の方法で使用することができる。」
(※以下にその図が掲載されています)
さらに、DMEアーク飛行もRNAV(GPS)で代用することが可能です。
AIM 1-2-3 では、他にもさまざまなRNAVの代用利用について説明されていますが、この記事ではDMEの代用に焦点を当てて解説します。
DME距離をGPSで代用する際の注意点
DMEの代用としてGPS距離を使用する場合、GPSのナビゲーションデータベースが最新であることを必ず確認してください。
また、ナビゲーションエイド(NAVAID)が故障している場合にGPSを代替手段として使う際は、ATC(航空管制)と事前に調整する必要があるかもしれません。
「DME必須」と書かれた進入方式でのGPS使用
進入チャートに**「DME required(DME必須)」**と書かれているのを見ると、「自機にDMEが搭載されていないなら使えない」と思うかもしれませんが、実はそうとは限りません。
AIMの1-2-3項の注記1には、次のように記されています:
「このセクションで述べられている代用は、手順上で施設が必要と明記されている場合(例:“ADF required”など)でも適用される。」
例:ミネソタ州のThief River Falls空港(KTVF)
それでは、**ミネソタ州にあるThief River Falls空港(KTVF)のILS進入方式(滑走路31)**の注記セクションを見てみましょう。
進入方式チャートの注記セクションを見ると、「DMEが必要」と記載されていることに気づくでしょう。
しかしこの場合でも、適合するRNAV機器(例:GPS)を搭載していれば、従来型のアナログDME装置がなくても、この進入方式を飛行することが可能です。
このような代用は理にかなっています。というのも、近年のグラスコックピット(デジタル表示計器)を搭載した新型機には、DMEラジオが標準装備されていないのが一般的だからです。
これは、RNAVがIFR飛行のあり方を変えつつあること、そしてさまざまな航空機装備の機体にとって、空港周辺での飛行がより簡単になってきていることを示す、もう一つの好例です。
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